映画『追憶』
【公開】2017年5月6日
【監督】降旗康男
【脚本】青島武、瀧本智行
【出演者】 岡田准一/小栗旬/柄本佑/長澤まさみ/木村文乃/西田尚美/安藤サクラ/吉岡秀隆/矢島健一
映画『追憶』のネタバレ・あらすじ
篤・啓太・悟は幼いころに殺人を目撃した過去があります。
幼い頃、親から捨てられた三人は、涼子が営む喫茶店「ゆきわりそう」に身を寄せ、涼子に想いを寄せる常連客・光男と家族のように暮らしていました。ささやかにクリスマスを楽しもうとしていた五人の元にある男が訪れたことによりその日々は壊されてしまいます。
涼子の過去を知る男の乱暴な振る舞いに、とうとう三人は我慢ならず反抗するも
子どもの手では結局それは男の怒りを買っただけでした。
そんな子どもたちを守ろうと、涼子はとうとう男を刺し殺してしまうのです。
今日のことは忘れなさい、そしてこれから自分たちは他人になるのだと
三人に言い聞かせる涼子。
そして大人になった三人。
篤は刑事となっていましたが妻とはすれ違う日々を送り、自分を捨てた母親にお金をせびられていました。啓太は出産を間近に控えた妻とあたたかな従業員たちと幸せな日々を過ごし、悟はうまくいってない会社・家族のために金策を考える日々…とそれぞれの暮らしがある中、富山に帰ってきた悟と篤はラーメン屋での再会を果たします。
悟とわかったときに篤は情けないような、泣き出しそうな、そんな複雑そうな表情をしていました。
富山に帰ってきたのは啓太に会うためだと話す悟。
「あっちゃんは忘れていいから、啓ちゃんに任せておけば大丈夫だから」と
酔いが回った状態でぼそりと篤に告げ、悟は去ります。
そんな中、悟が刺殺体で発見されます。
篤は事件の担当として、悟が富山に来た足取りを追うことになります。
悟の友人だったことは明かさず、単独で篤は啓太に会いに行きます。
ところが啓太はそっけない態度を取り、何も知らないと篤を追い返すのです。
それ以外に何か手がかりはないかと、篤は悟が自宅に残していた、「あんどの里」というメモのことを思い出します。篤はインターネットで検索し、そこを訪ねますが、なんとそこには車椅子に乗った涼子と、涼子を介護する光男がいたのです。
自殺未遂をした母親を見舞った篤。そこで妻・美那子とようやくゆっくりと話す時間を取ることができます。母親も自分も似ている、同じように寂しさを抱えていたと話す美那子。
生まれてくることのなかった赤ん坊に対し、その子がいてくれることで自分の寂しさを埋めようとしていたのかもしれないと話します。
光男と涼子に会いにいく篤。
涼子は三年前に事故に遭い、その後遺症で昔のことはほとんど覚えていないのだと言いました。そして、光男も篤に言うのです。
「篤君は忘れていいんだよ。大切なことだけ、誰かが憶えていればいいんだから」と。
捜査をしていくうちに、悟と篤がラーメン屋で再会したことが露見します。
そして、ゆうりょくな容疑者と思われていた、悟にお金を貸した人物も
啓太ということが聞き込みにより判明してしまいました。
捜査を外れるように言われる篤でしたが、それを聞き入れず
またもや単独で啓太に会いにいく篤。
知っていることを話すよう言い募るも、啓太は頑として口を開きませんでした。
そんな時、真里が体調を崩し倒れてしまいます。
篤の車で急いで病院に真里を運ぶ篤と啓太。
啓太を最有力容疑者として張り込みを行なっていた篤の同僚たちは
篤の逃走とも見える行為に仰天しつつ後を追います。
ストレッチャーに乗せられて処置室へ運ばれる真里に付き添う啓太のため、
追いかけてきた同僚たちを少しだけ待ってくれ、と必死に止める篤。
そこに一本の電話がかかってきます。
それは東京に残った同僚からのもので、悟を殺した犯人がわかった、というものでした。
なんと犯人は悟の妻と、悟の会社の従業員が結託し悟の保険金を目当てに殺害したという
なんともやりきれないものでした。
真里の出産を待つ間、そのことを啓太にも伝えると篤よりもさらに悟の苦労を理解していた啓太は「あいつ家族のために頑張ってたのに」と悔しそうに顔を歪めるのでした。
そして篤は、啓太からこれまでの話を聞くのです。
真里が自分の産みの母親の名前から一字とって子どもの名前に使いたい、
そう言っていた文字は「涼」。
なんと真里は、かつて涼子があの男を殺して刑務所に入ったとき、刑務所の中で産んで
里子に出した子だったのです。
それは、たまたま涼子の事故を新聞で知った啓太が涼子に会いに行った際、
光男が涼子のために憶えてて欲しいと言って教えてくれた事実でした。
そして啓太が家を建てるために買った土地、そこはかつて「ゆきわりそう」があった土地でした。そこで新しく家族を作ると篤に告げる啓太。
啓太は自分の手で「ゆきわりそう」を壊していきます。
いい思い出も、辛い思い出もあった場所。けれど幼い彼らの居場所でもあったそこ。
それを啓太は自分の手で壊して、また新たな居場所を作り上げていくのです。
そして篤は涼子を海辺へと連れ出して話しかけます。
しゃがみこんで涼子の顔を見上げる篤。
涼子はわからないながらもふと篤を抱き寄せ、頭を撫でます。
目を閉じて、小さな子どものように頭を涼子へ寄り添う篤。
涼子の目の前には、かつてもよくみていた、1日の終わりを告げる夕陽が、ありました。
映画『追憶』の感想
全体的にちょっとしんみりする作品です。
映像も少し昔っぽさを感じるというか少しぼやけた感じの撮り方。
幼なじみ三人が、刑事・被疑者・被害者というなんとも宿縁めいた関係性で再会を果たすのですが、それぞれに抱えているものがとてもリアル。同世代の人が観ると自分に重ねてしまってはじめの方は少し気分が重たくなってしまうのではないかなと思います。
実際自分がそうでした。
それから事件が動き出すとその動きにのめりこんでしまいます。
登場人物はそんなに多くない、しかも容疑者の最有力候補もわかっている状態の
クローズドサークル的な事件なのに最後まで飽きさせないところはすごいなぁと思います。
それ故に、犯人のあっけなさというか言ってしまえば幼なじみの関係性だったり
過去の恩人との再会だったりとどこかドラマチックな方向性がある中で、
非常に俗物めいた内容が原因での結末だったので描きたかったのはそこじゃなかったんだなぁと感じました。
過去からのしがらみにどういった救いがあるのか、それをもたらすのはなんなのか
そういうテーマが最終的に描かれているのかなと感じました。
最後のシーンはとても綺麗な風景なのに、壮絶というか泣きたくなるほどに感情が昂りました。ものすごく大きなものに包まれているというか…あの光景が「救い」というものなのかと感じます。