電車に乗る花嫁をあなたはみたことがありますか?
ちょっと印象的で忘れられないですよね。
そんな花嫁がでる映画「阪急電車 片道15分の奇跡」では、複数の知らない人たちが一本の電車の中でそれぞれに印象的な出会いをし彼らの人生の一部に変化をします。
原作は「フリーター、家を買う」などで知られる作家:有川浩の短編小説集です。

主人公は複数でてくる群像劇で、それぞれに物語があります。
- 後輩に彼氏を寝取られたOL:高瀬翔子
- 息子夫婦と関係がうまくいっていないおばあさん:萩原時江
- 彼氏のDVにあう女子大学生:盛岡ミサ
- ママ友の付き合いが苦手な主婦:伊藤康江
- 大学に馴染めない学生:小坂圭一
- 自分の名前に不満がある女子大生:権田原美帆
- 大学進学を控えた女子高生:門田悦子
- 何かを抱えた少女:樋口翔子
の9人がそれぞれに印象的な出会いをし彼らの人生に少しの変化を与えてくれます。
そして、それは阪急電車、今津線の中で繰り広げられるのです。
阪急電車は全8駅、全長7.7キロの片道わずか15分の路線で、それぞれの駅ごとにお話しは進んでいきます。
季節は10月、一つ目の宝塚駅で時江とその孫の亜美、主婦の康江が乗り、電車が発車します。
次の宝塚南駅では、後輩に彼氏を寝取られたOL翔子が純白の花嫁姿で乗り込みます。
翔子はすでに披露宴に出席した後で電車内で彼女はその格好から浮いていました。
そんな翔子に時江が声をかけ、彼女にあった話を聞くことになります。
次の駅でDVされている女子大生ミサとその彼氏カツヤが乗り込みます。ミサの態度にカツヤがキレて彼女を残して駅を降りてしまいます。
権田厄神駅では、男子学生の小坂圭一と権田原美帆と出会います。
二人はヘリコプターの話で盛り上がり、同じ大学であることを知ります。
最終駅につくと、DVにあっている女子大生ミサの考えも変わっています。
場面は一変し、少女の翔子が帰り道に「誰か、助けて」とつぶやきます。往路の物語はここで終わります。
そして季節は3月になり、復路の列車が走りだします。10月の時とは違ういい変化がそれぞれに訪れています。
- 高瀬翔子(中谷美紀)… 32歳。後輩に婚約者を寝とられたOL。
- 盛岡ミサ(戸田恵梨香)…彼氏のDVに悩む女子大生。
- 萩原時江(宮本信子)…孫と電車に乗るおばあちゃん。
- 伊藤康江(南果歩)…ママ友との付き合いに疲れている主婦。
- 権田原美帆(谷村美月)…自分のあだ名に不満をもつ女子大生。
- 門田悦子(有村架澄)…受験を控えた女子高校生。
- 萩原亜美(芦田愛菜)…時江の孫。
- 小坂圭一(勝司涼)…友達ができないことに悩みを抱える男子大学生。
- 樋口翔子(高須瑠香)…悩みを抱える少女。
- 羽田健介(鈴木亮平)…翔子の元婚約者。
- 小峰比奈子(安めぐみ)…翔子の後輩。
- カツヤ(小柳友)…ミサの彼氏。
- マユミ(相武沙希)…ミサの幼馴染。
- 披露宴の会場係(大杉漣)
- 健吾(高橋努)…ミサの幼馴染の兄。
- 遠山竜太(玉山鉄二)…悦子の彼氏。
沢山の登場人物が出てくるのですが、本当に少ししか関わらなかったり、世間話をしたりと本当に現実味にあふれた映画でした。
印象的な場面は、おばあさんに向かってお辞儀をする翔子の後ろ姿が映されるシーンです。
翔子の後ろ姿がただただとても綺麗でした。
電車に乗った直後の翔子は自分のやったことに対してこれで良かったのか少し後ろめたさがあったような印象でしたが、時江に出会い話を聞いてもらった後は彼女の気持ちもすっきりしたのか表情も穏やかで笑顔がこぼれる様子に、私も時江に会えてよかったなあと思いました。
対称的に時江の悩みがあまり焦点に当てられていなかったのが、ちょっと疑問に残りました。
原作未読な私としては、原作では彼女の悩みは解決しているのかなと思いつつ、結構なキーパーソンだったので時江にもう少し焦点を当てて欲しかったです。
旦那さんが凄く好きだったのは観ていて分かったけれど、今の彼女の悩みと関係があるのか映画を観ただけではちょっと分からずな印象でした。

また、登場人物の発する何気ないセリフがとても印象的で心に深く刺さるシーンが何度もありました。
時江
時江から孫の亜美にさとす言葉です。
嘆いているだけじゃ現実は変わらないんだ、自分から行動に移さないと意味がないということを言いたいのかな、と私は考えました。
時江は当たり前に思って言っている言葉ですが、自分はできていないから嘆く前に行動しなくてはなぁ、と実感しました。
ミサ
女子大生ミサから専業主婦の康江に贈られた言葉です。
これもまた多くの人に響くセリフなのではないかと思います。
人間関係に悩まされるのは誰もが通る道ですが、このセリフを学生の時に聞きたかったーと私は思いました。
今でも為になる言葉ですが、本当に人間合う合わないはあって当然なのに自分の人間関係を切るとなると結構難しいですし、すごく考えさせられるセリフでした。
あなたのことちゃんとみてる人もいるから。
翔子
時江から翔子、そして翔子から少女の翔子に贈られた言葉です。
とっても短い言葉ですが、この言葉だけで救われる人が何人いるでしょう。
映画の中の少女にとっても大きな一言に思いました。
ぽろぽろ涙を流す少女に彼女の傷みが誰かに気付いてもらって良かったと思いました。
一人だけでも自分の味方がいてくれるってこんなにも心のよりどころになるんだなぁ、と感じました。
これといって大きな事件はなく淡々と日常の中にある風景を切り取ったかのような映画です。
現実味はありますが、起承転結がはっきりしている映画が好きな人には好みじゃないかもしれません。
本当に誰しもが抱える悩みをちょっとずつ解決されていくので、今ちょっと悩みがある人には心に響くセリフがあるかもしれない映画です。
