どことなく仄暗い、人間の本性が見え隠れするサスペンスもの…無性に見たくなるときがありませんか?
今回は淡々と人の多面性を描いた作品、「三度目の殺人」のネタバレと感想をご紹介します。
映画『三度目の殺人』
【公開】2017年9月9日
【監督】是枝裕和
【脚本】是枝裕和
【出演者】福山雅治/役所広司/広瀬すず/斉藤由貴/吉田鋼太郎/満島真之介/松岡依都美/市川実日子/
映画『三度目の殺人』ネタバレ・あらすじ
ある、ひとつの殺人事件がありました。
解雇された工場の社長を殺害し、火をつけた罪で起訴された三隅。
本人も殺害したことを自供し、死刑はほぼ確実と見られていました。
そんな三隅を弁護することになった重盛。
せめて無期懲役へと減刑するために調査に赴く重盛。
事件現場となった河川敷に出向くと、そこにはひとりの少女が佇んでいました。
重盛に気づいた少女は足を引きずりながら立ち去ります。その様子が気になりながらも
改めて事件現場をみると、そこには死体の焼けた跡が、まるで十字架のように残っていました。
調査を進める中で、被害者の財布にガソリンの染みを見つけた重盛。
お金を盗るために殺したのではなく、殺してから財布を盗んだというように
弁護方針を強盗殺人ではなく、殺人・窃盗の線で調査をする方向に決めます。
かつ動機については怨恨で進めようとしていました。
その方が罪が軽くなるから、と。
そのためにも被害者家族の心象を良くしようにと三隅が書いた手紙を被害者家族に届ける重盛。そこには事件現場にいた少女がいました。彼女は被害者の娘・咲江でした。
そして被害者の妻は悲しみにくれた様子で「こんなもので犯人を許せって言うんですか」と手紙を破り捨てます。
素直に自分の罪として自白していた三隅でしたが、ところどころ証言におかしなところが出てきます。言ったことが前回と違っていたり辻褄が合わなかったり…。
そして決定的だったのは、雑誌に独占記事として書かれた内容。
なんとそれは、被害者の妻から依頼されて殺したというものでした。
三隅の通帳に、給料とはまた別に五十万の振込があったことが判明したのです。
そしてメールのやりとりも…。
主犯を被害者の妻としてさらに調査を進める中で、被害者の妻とではなく咲江との繋がりが発覚します。そのことを尋ねても、誤魔化され、面会のたびに言っていることがころころと変わっていく三隅の様子に、減刑を望んでいないような気さえしてもどかしさを覚える重盛。
そうして、減刑に対する有効な手立てなしに、とうとう裁判が始まってしまいます。
公判の最中、重盛のところを訪ねて来た咲江は、自分が父親に性的暴行を受けていたこと、そしてそんな自分のために父親を三隅が殺してくれたのだと、そのことを法廷で証言したいと言いにきます。
思いもよらぬ事実、けれど三隅の減刑にとっては有効な証言。
根掘り葉堀り、思い出したくもない辛いことを聞かれてしまうよ、という重盛に覚悟していると言い切る咲江。自分の中にあったのかもしれないと、父親への殺意を自覚するかのように呟くのです。
被害者をどうやって殺害現場に呼び出したか、という問いに三隅は食品偽造の件で呼び出したと言います。それからさらに咲江が証言をするという話を聞いて、自分は本当は河川敷には行ってない、殺してないと言い出します。
そもそも初めに拘置所に来たときには、殺してないと言っていたけれど嘘をつくな、
本当のことを言えば死刑にはならないと言われたから「殺した」と言っていたと
三隅は今更になって証言を覆します。
三隅の何を信じていいかわからなくなった重盛は今度こそ本当のことを教えてくれ、と声を荒げます。頼むよ、と懇願するように三隅の顔を見るも、三隅は信じてほしいと頼み込むだけでした。その様子に折れた重盛は弁護方針を変えることに。
結局、死刑判決を覆すことのできなかった重盛。
三隅がいきなり反抗を否認したのは咲江が辛い証言をしなくて済むようにか?と
問いかける重盛に答えず、そう思ったから自分の否認行為に乗ったのかと問い返す三隅。
三隅は、生まれてこない方が良かったと思ってきた、いるだけで自分は人を傷つけるからだ、と、そう続けます。そんな自分が、もし重盛の言うようなことをしていたのであれば、少しくらい人の役にも立てたということなのかもな、と笑う三隅にそれが例え人殺しという行為であってもかと問う重盛。
けれどそれには答えず、誤魔化すように笑ってダメですよ、こんな人殺しにそんなこと期待しては、と三隅は重盛に告げるのでした…。
映画『三度目の殺人』の感想
大げさなトリックも何もない、事件の謎解きをするような話ではなく、その後を描いたお話。
犯人がすでにわかっている状態から、どのような話の展開があるんだろうなぁと思いながら見ていましたが…
正直なところ消化不良です。
面白くなかった、というわけではなくて、最初から最後まで三隅の思考が読めなさすぎて…この人はいったい何がしたかったんだろうというのが分からずモヤモヤしてしまいます。
そうやってどうとも捉えることができる終わり方を目指されてるんだと思うんですが

終始穏やかな笑みをたたえていて、殺人を犯した人、
それも死刑を控えた人には思えないくらいなんです。
けれど、別に快楽殺人犯というわけでもない。
そんな三隅の意図がわかるように、
咲江の秘密や飼っていたカナリアを処分した話が出てくるんですが
どうもこうピンとこない、というか…
咲江だったり自分の娘を守るような言動はするのに切実さというか温度感がないんですよ。
終始、笑顔。
自分のことは何も話さない。
話すのは、諦めにも似たぼやきというか、人生観?人間観だけというか…
それが逆に何だか怖いなぁと思ってしまいます。
最後のシーンで、十字路の真ん中で空を見上げる重盛。
その姿に虚無感のようなものを感じて、このときの重盛は何を感じていたんだろうなぁと思います。
三隅を死刑から救えなかったこと、そもそもの三隅の意図や思惑、そういうものがわからなかったことを嘆いているのか…三隅の手の内で転がされたような感覚に悔しさのようなものを抱いているのか…。

タイトルの「三度目の殺人」、これはどれを指して言ったものなんだろう、
そこがまず気になっているので早速もう一度見返してこようと思います。
それでは!!