映画「舟を編む」のあらすじネタバレと感想

あなたは一冊の辞書を作るのにどのくらいの時間がかかると思いますか?

1年?2年もしくは5年?

私もそのくらいかな、と考えていました。

それ以上の年月を考えた人はなかなか鋭い思考の持ち主です。

映画「舟を編む」は、その一冊の辞書を主人公と様々な人が情熱を懸け作り上げる物語です。そして、対人関係に苦手意識を持つ主人公の人間成長ドラマでもありました。

原作は作家三浦しをんが書いた小説で、2012年の本屋大賞に選ばれた作品でもあります。個人的に原作を読みたいと思いつつ、なかなか読む時間がなく時が過ぎ去り、映画を先に観ることとなりました。

簡単なあらすじ&ネタバレ

人と話すのが苦手な主人公の馬締 光也(まじめ みつや)は、辞書編集部の荒木 公平(あらき こうへい)の後釜として彼にスカウトされます。馬締が辞書編集部に配属された後、新しい辞書「大渡海」を作ることになります。

そこで監修者の松本先生の言葉に馬締は聞き入り、辞書作りに没頭していきます。辞書作りの途中で、奥さんの介護のために凄腕の編集者である荒木が退職してしまいます。

荒木さんの送別会後、馬締と先輩である西岡 正志(にしおか まさし)は話をしますが、上手く返事が返せない馬締に西岡が怒り、二人の間に少しの亀裂が入ります。その後、馬締は下宿先の大家であるタケばあさんに人と話すのが怖い、何を考えているか分からないという悩みを打ち明けます。

タケばあさんは、分からないから言葉があること、言葉が好きなら使わなければもったいないことを馬締に諭します。その日から、馬締は西岡に不器用ながらも積極的に話しかけるようになります。西岡もそんな馬締にいつしかあった亀裂はなくなります。

 

編集部の仲間と打ち解けてきた馬締ですが、ある日、下宿先の孫である林 香具矢(はやし かぐや)と出会い、彼女に一目惚れをします。

編集部の仲間にアプローチの仕方を相談し、ラブレターを書くことにした馬締ですが、書いたのは達筆すぎる筆で書かれた果たし状のようなラブレターでした。馬締は西岡に相談しますが、最初こそあり得ないと言われるものの、そのまま出して香具矢の反応を見ろと言われてしまいます。

 

そんな中、「大渡海」の出版が中止になるかもしれないという噂が馬締の耳に届きます。先輩の西岡がアイデアを出し、出版中止の危機はひとまず回避したものの、今度は西岡が編集部を去り宣伝部へ異動させられることになってしまいます。

 

そして、辞書を作り始め12年という月日が経ちます。

辞書編集部には、元女性ファッション誌編集部員の岸辺 みどり(きしべみどり)が新たに仲間に加わり、「大渡海」の製作に加わっていきます。

主なキャスト

馬締 光也(松田 龍平)…この物語の主人公。真面目で対人関係に苦手意識がある。言語学を大学で専攻し、辞書編集部にスカウトされる。

林 香具矢(宮崎 あおい)…ヒロイン。和食の板前見習い。下宿先の孫。馬締に一目ぼれされる。

西岡 正志(オダギリ ジョー)…辞書編集部の先輩。チャラいがコミュニケーション能力はすごい。

荒木 公平(小林 薫)…敏腕辞書編集部員。妻の介護のため自分の後釜として馬締を辞書編集部に引き入れる。

松岡 朋佑(加藤 剛)…辞書編集の監修者。

タケ(渡辺 美佐子)…馬締の下宿先の大家さん。

岸辺 みどり(黒木 華)…12年後の辞書編集部に配属される元ファッション編集部員。

感想

大きなインパクトはないけれど、自分で小説を読んでいるような気持ちになる映画でした。

主人公なりの成長が見られ、周りの人達の優しさに心がじんわり温かくなるお話でした。また、専門的な辞書作りの過程を知ることができて面白かったです。一冊の辞書を作るのにこんなにも手間暇がかかるのかと驚きました。

中でも印象に残ったシーンは、映画の序盤で辞書「大渡海」についての第一回目の話し合いの場面です。

その話し合いの場で、監修者である松本先生がこんな話をしてくれます。

「言葉は生まれ、中には死んでいくものもある。そして生きていく中で変わっていくものもあるのです。言葉の意味を知りたいとは、誰かの考えや気持ちを正確に知りたいということです。それは、人と繋がりたいという願望ではないでしょうか。だから私たちは今を生きている人達に向けて辞書をつくらなければならない。」

 

馬締はこの先生の話を聞いて心に刺さるものがあったのか真剣に聞き入ります。

 

私も心に刺さった1人でした。私にとって辞書とは分からない言葉、難しい言葉を調べるだけのものでした。しかし、辞書を作る松本先生は言葉もそれを読む読者も大切にして辞書を作っていることにすごいなあ、と純粋に感じました。馬締においても、この松本先生の言葉は彼に衝撃的な印象を与えたように思いました。

 

もう一つ印象的だったのは、先輩西岡が編集部を去ると決まった後に松本先生に馬締が西岡に「ダサい」などの現代語の用例作りをしてもらいたいと頼む場面です。

はじめの馬締だったら自分の気持ちを言葉にすることが苦手な彼にとってはあり得ないことでした。しかし、辞書作りを通して自分の気持ちを伝えることの大切さを知った彼は努力し成長していきます。この場面も、馬締の成長が見られる場面でもあり、彼なりに西岡を思い大切にしていることが伝わってくるシーンでした。

 

後半では、馬締と松本先生の関係性にも変化が見られます。二人でファーストフードに言葉の用例採集をしにいく場面は、観ていてほっこり和みます。会話は仕事である用例採集なのですが、二人を包む空気があたたかく感じられました。個人的にこの二人のやりとりが一番好きです。

 

また、馬締光也演じる松田龍平さんの演技ですが私は好きでした。感情の変化は表情にあまり表れないのですが、辞書作り1年目と12年目では話し方も歩き方も変化しているように感じました。私は、はじめて松田龍平さんの演技をまともに観たのですが、彼の出演している他作品も観てみたくなりました。

まとめ

人と話すのが苦手、人と繋がることを怖がっていた主人公が、辞書作りの中で人と出会い人と繋がるよう努力し彼なりに成長していく彼と「大渡海」の人生の物語です。

恋愛面もありますが、あくまで主役は「仕事」であり、そこに主人公と恋愛含めた周りの人間関係がどんなふうに変化していくか描かれています。

 

あまり物語に大きな変化がなく進んでいくので、本を読むのが苦手という人は眠くなってしまう映画かもしれません。何かに没頭すると時間を忘れて作業してしまう人、人と話すのがちょっと苦手だという人は主人公の馬締に共感してしまう映画かなと思います。

単調ではあるが熱い専門的な仕事の話が観たい人、人の温かさに触れたい人にはおすすめの映画であると思います。

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