いつかどこかで運命の恋と出会うかもしれない。
そんな小さいころに夢見ていたことありませんか?
大人になって現実ではなかなかそんなこと起こるわけがないとわかっていても、心のどこかでは捨てきれない小さな期待…。
そんな夢物語のような出会いを描いた作品をご紹介します。
「植物図鑑 運命の恋、ひろいました 」 ネタバレ
不動産屋に勤めるさやかはうまく行かない仕事、ひとりの部屋で冷たい弁当を食べる日々に寂しさを感じていました。
そんな日々を送っていたある雪の日、さやかは帰り道で行き倒れていた青年を見つけます。
「噛みません、しつけの出来たいい子です」
お腹が空きすぎて一歩も動けないというその青年は、そう言っては、拾ってくれないかとさやかに頼みます。
カップラーメンを食べさせて、シャワーを貸して、一晩泊めて…
翌朝目が覚めた時には部屋にはおいしそうな匂いが充満していました。
久しぶりに誰かと一緒に、誰かが作ったごはんを食べたさやかは思わず涙を流してしまいます。
そのまま部屋を出て行こうとする青年へ、行くところがないならこのまま自分のところにいればいいと引き止めます。
青年は樹、とだけ名乗りました。苗字は好きじゃないから、と。
それから続く、樹との同居生活。
ある日、樹がバイト代で買ったからプレゼントする、と言ったお揃いの自転車に乗ってふたりは河川敷へ出かけます。
そこにあったのはフキ、フキノトウ、ツクシ…。ごちそうがタダで手に入るよ、という樹と野草取りに励むさやか。
おいしく調理された野草たちにさやかは次の「狩り」を心待ちにするようになります。
思いの外、樹との生活が楽しくなったさやかは同居を始める頃に樹が言っていた「半年お世話になってもいいですか?」というセリフに不安を覚えつつも、名前しか知らない樹にどんどん惹かれていきます。
そんなさやかは狩りに出た先の川で怪我をしてしまい、そのときに樹が差し出してきたブランド物のハンカチに胸が騒ぐさやか。
どう見ても女性からのプレゼントだろうそれに何とか動揺を隠しながらどうしたのか樹に尋ねるとバイト先の人からもらったとのこと。
さやかは不安な気持ちを抑えることが出来ず、とうとう樹のバイト先へ押しかけてしまいます。
そこではバイト仲間であろう女性から「クサカベくん」と呼びかけられる樹の姿が。
自分は教えてもらえなかった樹の苗字。
樹のことを何も知らない自分を改めて思い知らされ、樹と口論になるさやか。
樹も樹で、飲み会帰りに会社の同僚に送られているさやかに対しきつい口調で責めます。
口論の勢いで、とうとう樹を好きだと告げてしまうさやか。
樹も同じ気持ちを持っていたことを告げ、もう同居人なんて言わせないとさやかにキスをします。
想いが通じあって幸せそうに笑うふたり。
けれどさやかにはひとつの不安がありました。
それは半年の約束。ちょうどその約束の日はさやかの誕生日でした。
いなくなってるかもしれない、と焦りながら部屋へ帰ると真っ暗な部屋。
おそるおそる部屋へ入っていくと樹と手作りケーキに迎えられます。
プレゼントには狩りの時に使えそうな植物図鑑。
幸せな誕生日を過ごし、きっと大丈夫だ、このまま幸せな時間が続くと安心した次の日。
帰宅したさやかを迎えたのは「ありがとう」と書かれたメモ。
さやかの写真。一冊のレシピノート。
それだけでした。
何も言わずに樹がいなくなってしまって、さやかは途方に暮れます。
また戻ってしまったひとりの生活。
コンビニのおにぎりで済ませるお昼ご飯。
樹を吹っ切れないまま約4ヶ月が経ち–––気づけば春。
しばらく乗っていなかった樹からもらった自転車に乗り、さやかは初めて樹と狩りをした河川敷へと出かけます。
ばっけみそ、フキごはん…樹のレシピノートを見ながら作ってもらったごはんを今度は自分の手で作っていくさやか。
春の訪れとともに、ようやく前へと進み始めることができたさやか。
樹と過ごした時間も穏やかに思い出せるようになっていきます。
そんなさやかの元へ小包が届きます。差出人は、「日下部 樹」となっていました。
中に入っていたのは一冊の植物図鑑。
それは写真担当のところには樹の名前が記載されているものでした。
その本の出版記念パーティがあると知ったさやかは、パーティ会場へ向かいます。
そこで樹の姿を見つけるも、たくさんの人に囲まれて挨拶をする樹の姿に声をかけることが出来ずトボトボと家へ帰るのでした。
そして、見つけたのは自分の家の前で待つ樹の姿。
ふたりはよく出かけていた河川敷へと向かうのでした。
「植物図鑑 運命の恋、ひろいました」感想
なんの変哲も無い日々にどことなくつまらなくなる、寂しくなることはきっと誰もが感じたことのあることだと思います。
さやかが上司に怒られているシーンでは自分のことのように感じてしまって身を竦ませてしまうことも…。
そんな日常に飛び込んできた、ささやかな非日常。
樹がきてからのさやかの日々の劇的な変化に、誰かと生活することって大変なこともあるけれどやっぱりいいなぁと思わされます。
静かな部屋に自分以外の人の生活音があること、誰かと食事をすることのあたたかさ。
手作りのあったかいご飯のパワー。
さやかと樹、ふたりの日常が本当に幸せそうで楽しそうで春の陽射しのきらきら感も相まって、眩しくて羨ましくなってくるのです。
そんな幸せそうな前半部分からの、急展開。
冬の厳しい寒さを表しているような暗い表情や、少しでも樹のことを知ることができないかと
樹のバイト先にいた女性の跡を着けてしまったりと樹がいなくなった後のさやかの様子はボロボロで胸がぎゅっと締め付けられます。
そんな中樹から届いた消息。姿を表した樹。
樹が告げる、彼の事情や本心とは。
さやかとはどうなってしまうのか。
ふたりの行く末をぜひ見守ってほしいと思います。
また、この映画に欠かせない、野草を使った料理にも注目してほしいなと思います。
名前も知らなかった野草が出てきたり、知っていても食べるなんて思いもよらなかったもの。
フキやフキノトウ、ツクシが食べられることは知っていても自分ではなかなか採取して料理をするなんて考えつきませんよね。
さやかが劇中で狩りのために自分で植物図鑑を買ったように、ふたりの恋模様にキュンとしたりハラハラする一方で、
おいしそうな料理にお腹も刺激されて自分でも作ってみたいと思わされる作品です。